元々、上益城5町(当初は西原村を含め6自治体)による廃棄物処理場の計画は、2015年に6自治体による「熊本中央一般廃棄物処理施設整備促進協議会」を設置して、6自治体の一般家庭から排出される一般ゴミを対象とした処理施設を整備するために進められて来ました。
この「協議会」で課題とされたのは、①少子高齢化や人口減少による町村の財政規模の縮小やひっ迫②ゴミの多様化による適正処理の困難③多発する自然災害による突発的な廃棄物の増大といったことが挙げられていました。
現在、6自治体から排出されている廃棄物に関しては、御船と甲佐の2町が「御船甲佐クリーンセンター」(御船町内)、益城・嘉島・西原の2町1村が「益城クリーンセンター」(益城町内)、山都町については「千滝クリーンハウス」(山都町内)でそれぞれ処理されています。
同協議会では前記した課題を解決するため、6自治体による広域的な一般廃棄物処分場を新たに整備していくことを目指し、その建設候補地を選定するため「熊本中央新施設建設候補地評価委員会」(委員長は天草市立御所浦白亜紀資料館の長谷館長、副委員長は熊本大の鳥井特任准教授、他委員は熊本大学の学識者、6自治体の区長など、総勢16名で組織)を設置して、8回に渡る審議を経た後に2018年1月、同評価委員会から「『益城クリーンセンター周辺候補地』および『古閑原、古閑迫地区候補地』(注・現在の大栄環境らの処理場計画地となっている御船町上野地区)」という評価結果の答申を受けています。
そして同年5月には「熊本中央一般廃棄物処理施設整備促進協議会」で「最終建設候補地の選定に当たっては、評価委員会の答申内容を最大限に尊重し、併せて本事業にとって必要不可欠である地域住民や地権者との合意形成の難易度などを踏まえ、総合的に検討を行った結果、『古閑原、古閑迫地区候補地』(御船町大字上野)を最終候補地として決定しました」と機関決定しています。さらに翌6月には各町のホームページで「一般廃棄物処理施設の最終建設候補地を決定しました」と公表しています。
しかしながら、こうした6自治体(その後、西原村は協議会から離脱)による慎重な協議を経て、しかも公正を期すために学識者などの専門家を始めとする地域住民の代表者を含めた「建設候補地評価委員会」を設置して、建設候補地まで選定しておきながら、突如、2020年末に熊本県から提示された大栄環境らの産業廃棄物焼却施設の事業計画に対して、まるでそれに飛び付くかのようにして「5町長が現地を視察し、そのうえで正式に回答」(2021年3月29日の熊本県から5町長に対して同産廃施設の事業計画の説明の際の文書記録による)と返答しています。
さらに町政をチェックするはずの町議会においても、2021年10月1日の「御船町にエネルギー回収施設等(注・廃棄物処理場のこと)を整備すること」に関する覚書締結直後となる、同月末には御船町議全員が揃って大栄環境の産廃処分場を視察見学し、「井上副社長(注・大栄環境)は挨拶で『我々は同意行政に縛られていて何かにつけて同意が必要となっている。全ての施設を建設する上において地域の同意を得ている。地域とのコミュニケーション・地域の理解を得なければ、やはり事業拡大は出来ていない。今後とも地域との共存共栄を図る』と述べた」(注・町議会広報誌2021年12月発行「あおぞら21」170・171合併号)という、業者側の言い分をそのまま記した報告を行っています(産業厚生常任委員会の岩永宏介委員長)。
これは町政のチェックどころか、事業者の産廃施設建設計画に飛び付いた町長らの判断を、むしろ後押しするような恰好となっており、行政をチェックする機能を放棄したといっても可笑しくない対応です。
それだけでなく、県や町長、大栄環境らが揃って出席した2022年3月11日の処理場建設予定地の上野地区の住民を対象に開催された産廃施設の事業計画の説明会では、住民から何故、それまでの5町で進めてきた一般廃棄物処分場計画が、突如として産業廃棄物を中心とした処理施設に事業変更になったのかという質問に対して、藤木町長は「私としては説明をしないで、そのまま突っ走ることもできた」という、信じられないような住民無視の発言まで行っています。
このことについては後の町議会でも、この計画に反対を表明している唯一の町議から「この前の説明会で町長は火に油を注いだ発言をされております。それは何かというと(注・それまで5町で進めてきた一般廃棄物処理場計画が)、産業廃棄物が加わったこと(注・事業内容に変更されたことについて)を黙っていて突っ走ってもよかったという発言をされましたから、また住民は不信感があるというような、方向があらん方向に行き始めた」と追及されています。
もし、こうした住民無視の発言が国政レベルの場でなされたとすれば、即刻、その発言者は民主主義をないがしろにしたとして責任を取らされ、辞任に追い込まれていたことは想像するまでもありません。藤木町長のこの「そのまま突っ走ることもできた」という発言は、撤回してもし拭い去れない「民主主義を否定した発言」でもありました。
今回の大栄環境らの廃棄物処理施設計画の問題とは、なぜそれまで進めてきた5町による「一般廃棄物処理施設整備計画」とは全く異なる産業廃棄物処理を中心とする廃棄物処理施設へ突如として事業変更されたのか。その根拠と計画変更の手続きについて、御船町民の同意を何ら得ることなく、町長と事業者によって推進されているという「住民無視」のあり方について大問題があるということです。
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