藤木町長への「公開質問状」

今回の御船町上野地区への産廃処理を中心とした処理場計画の経緯に対して、藤木町長が発した「私としては説明をしないで、そのまま突っ走ることもできた」という住民無視の姿勢に関して、公開質問状を町長に提出しました。その回答結果は次の通りでした。

まず、大栄環境と石坂グルーブによる今回の産業廃棄物の処分場計画について、2021年3月に熊本県から説明を受け、5町でそれまで進めてきた一般廃棄物処理場とは全く異なる事業内容となったことについて、5町の町議会あるいは5町の町民に対して「どうして即座に事業計画の変更について説明を行わなかった」という質問をしました。その回答はというと…。

「従来計画から変更に伴う課題や整理や、事業の実現性の確認を行わなければ、議会や住民の皆様に説明ができないと判断し、以後数月の間、5町長間での協議や熊本県及び民間事業者との協議を重ね、併せて類似事業施設の現地視察などを実施してきました」
「このような期間を経たうえで、議会や住民の皆様に正確な説明を行うに当たり、民間事業者が提案した施設種類や事業規模等の前提条件を正式に確認する必要がありましたので、同年10月1日に熊本県知事立会いの下、5町と民間事業者が『エネルギー回収施設等検討に関する覚書』を締結したものです」
「また覚書の締結後に速やかに協議を進める旨を公表し、議会や住民の皆様に対して事業概要や経緯の説明を行い、並行して民間事業者と更なる課題整理を進めております」
などと答えています。

しかし、この回答内容は前記した「これまでの主な経緯」で説明してきた通り、「事業の実現性の確認」に関しては、大栄環境らが2020年12月2日に熊本県に提示した「事業計画の概要(素案)」で既に明らかになっており、このことは2021年3月29日、すなわち熊本県が5町長に対して大栄環境らの事業計画を説明した時には把握されていたものです。
さらに2021年7月6~7日にかけて、熊本県のナンバー2の地位にある田嶋副知事まで伴って、5町長による大栄環境の廃棄物処理場施設の視察見学直後の「現地視察結果概要」として「会社の運営は適切かつ効率よく実施されていた」「新たな施設を建設する場合は、エネルギーを地域で循環させる地域循環共生圏のモデルとなるような施設にするとことを表明」というように踏み込んだ「視察結果」をまとめています。
こうした経緯からして、回答にあったような「事業の実現性の確認を行わなければ、議会や住民の皆様に説明ができないと判断」などということではありません。そして御船町の住民に対して事業計画の説明を実施したのは、県から事業計画を伝えられた後の何と8カ月弱という長い時間を経てからの11月22日でした。それも建設予定地の上野地区だけの住民に限って開催された閉鎖的な説明会でした。これは町民から町政を付託された首長として「怠慢」としか言いようのない、極めて延滞した「判断」でもありました。

また2021年7月6~7日にかけて、大栄環境の廃棄物処理施設に5町長らと共に田嶋徹副知事まで伴って視察に行ったことに関して「田嶋徹副知事ら県幹部を同行して視察に行った理由について、御船町長ら5町長による要請なのか。むあるいは熊本県側からの申し出によるものなのか」という質問をしましたが、これには次のように回答しています。
「事業者の提案は高効率の発電など、廃棄物処理の全国のモデルケースとなる施設であり、今後の熊本県の廃棄物処理行政に大きな変革をもたらす可能性があること、また事業計画が県を通じて提案された経緯も踏まえ、県幹部の視察への同行について5町長から提案したものです」

という回答でした。
この回答内容からしても、今回の大栄環境らの計画が「県主導」で進められていることを裏付けるものとなっています。
また、前述した回答内容にあった県から大栄環境らの計画が最初にあったとされる2021年3月29日の時点では「民間事業者が提案した施設種類や事業規模等の前提条件を正式に確認する必要する必要がありました」ということなどなく、県各部らを伴ったこの7月の視察の後には「事業者の提案は高効率の発電など、廃棄物処理の全国のモデルケースとなる施設であり、今後の熊本県の廃棄物処理行政に大きな変革をもたらす可能性があること」との回答のあるように、十分に町議会や町民に対して、大栄環境らの事業計画を説明する条件は整っていたということでもありました。

公開質問状の最後の項目で「5町による当初の『一般廃棄物処理場』の計画から、それとは全く事業計画の異なる大栄環境らによる産業廃棄物処理を主体とした『廃棄物リサイクル施設・焼却施設』に大きく変更した処理場計画となっていることについて、当初の『一般廃棄物処理場』の計画予定地となっていた御船町上野地区を含めて、新たな廃棄物処理場計画の候補地を再検討して行く考えはありませんか」と質問しました。この質問には次のような回答を行っています。

「民間事業者から提案のあった事業計画は、従来の計画と比べ、5町の財政負担が大幅に軽減されるだけでなく、最終処分場を計画地に整備する必要がないことや、より厳しい環境基準が適用されるというメリットがありました」

この回答から伺えることは、まず「従来の計画と比べ、5町の財政負担が大幅に軽減される」という回答内容については、それまで5町で推進してきた「一般廃棄物処理施設」の整備計画(注・整備費用約86億円)より「財政負担が大幅に軽減できる」(注・大栄環境らの整備費用は140億円を想定 5町の整備費に対する地元負担は無となっている)ということを指すものでありますが、しかしこのことは「では、大栄環境らの処理場計画がなかったら、一体、どうするつもりだったのか」という逆の疑問にもつながります。すなわち、たとえ今回の民間事業者の産廃計画がなかったとしても、5町はそれまで進めてきた一般廃棄物処理場計画を実現させる以外に選択肢はなく、その財源を確保していくことこそが、行政に課された役割でもあったはずです。
それを「従来の計画と比べ、5町の財政負担が大幅に軽減される」からという理由で、それまで5町で進めてきた「一般廃棄物処理施設」の計画を、全く事業内容の異なる産廃処理場計画に「乗り換える」という行為は、いかにも「安直な判断」としか言いようがありません。そこには財政確保のための何の行政努力というものが感じられません。
また「最終処分場を計画地に整備する必要がない」という回答に関しても、「廃棄物処理の原則」というものを全く理解していないものとなっています。
それは一般廃棄物に関しては「自区内処理の原則」という大原則があり、廃掃法(廃棄物の処理及び清掃に関する法律)の第6条に「市町村は、当該市町村の区域内の一般廃棄物の処理に関する計画を定めなければならない」と明記されています。この意味することとは、原則として一般家庭から排出される家庭ゴミは市町村ごとに、その区域内(自区内)で処理しなければならないということです。つまり一般廃棄物の最終処分は、その区域内で処理しなければならない、と法律上で規定されているのです。それを「最終処分場を計画地に整備する必要がない」からといって、大喜びして産廃業者の今回の事業計画に「乗り換える」という判断は、まったく行政の長としての見識が疑われます。

こうして私たちが提出した藤木町長への「公開質問状」の回答内容を見てみると、そこには行政の長としてその役割を本当に果たしているのか―と疑いたくなる回答結果となっていました。

関連記事

  1. 事業者側の姿勢

  2. 「上野地区の産廃施設建設計画」に関する公開質問状に ご回答の御礼と報告…

  3. 配慮書を読んでみよう

  4. 熊本県上益城郡五町のごみ処理問題についてのかわいいパンフレット

  5. (仮称)上益城地域におけるエネルギー回収施設等設置事業に係る計画段階環…

  6. 産廃処理施設 問題点

  7. 産廃処理施設 公開質問状と回答

コメント

  1. この記事へのコメントはありません。

  1. この記事へのトラックバックはありません。