事業者側の姿勢

一方、産廃施設の事業計画を進める大栄環境についても、看過できない事実がいくつも明らかになっています。それは同社が公表している「大栄環境グループの環境づくり2022」というパンフレットにありました。このパンフの「特集2」の項目で「熊本県上益城5町地域循環共生圏構築へ」というタイトルが付けられたページがあり、そこには同社と石原グループによる御船町上野地区に計画を進めている処理場施設に関する、両社幹部の発言が紹介されています。

まず、石原グループの石原繁典部長が「石原グルーブはこれまで一般廃棄物を中心にビン・缶類や容器包装のリサイクルなどを行っており、産業廃棄物はあまり扱ってきませんでした。ですが、将来的に効率的な資源循環のあり方や地域の持続可能性を考えると、一廃と産廃の両方を扱う焼却施設を建設し、そこからエネルギー回収を行って地域に還元していくという形が不可欠だと考えていたんです」と述べた後に、大栄環境の大田成幸専務がこう続けています。

「そこで石原グループと大栄環境グループが共同で一廃と産廃を混焼してエネルギー回収を行う施設に取り組もうということになりましたが、なかなか思うような用地選定が進みませんでした」と、両社が今回の一廃と産廃の処理場施設の事業を模索していたことを記しています。そして大栄環境の藤原一樹社長室次長が、次のように述べます。

「そんな折、20211月に上益城5町を県から紹介されました。元々、5町共同での広域処理に向けて御船町の土地を取得し、焼却施設から最終処分場までを整備する予定で計画を進めていたところ、熊本地震の復旧・復興事業費の増大などもあり、当初の建設計画を見直さざるを得ない状況になっていると」

そして続けて石坂グループの石坂孝光理事長が、今回の御船町への施設計画について、その経緯をこう述べています。

「この話を県から受けた時、これはもう我々がやるしかないと思いました。御船町は高速道路を使えば県内はもちろん、九州全域へのアクセスも良い土地です。万一、この先また大きな災害が起きた時には、災害廃棄物処理の拠点になる。しかも民設民営で一廃と産廃の両方を処理する焼却施設を建設するというのは、九州全域でも前例のないことです。実現すれば平時・緊急時を問わず地域に貢献できると思いました」

これはまるで「災害」を待ち望んでいるかのような不適切な発言です。さらに大栄環境の大田氏は、こう喜びの声を発しています。

「上益城5町はもちろん、県が強力にバックアップしてくれているというのも、本当に心強いことです」

この発言は何と5町長と熊本県が「強力にバックアップしてくれている」ことを裏付けるものです。

さらに驚きは続きます。石坂繁氏は「それはやはり熊本地震の時に、大栄環境グループがしっかりと成果を上げた地域や行政からの信頼を得たからでしょう。さらに町長をはじめ行政の皆さんが大栄環境グループの三木RC(注・三木リサイクルセンター=兵庫県三木市)や三重RC(注・三重リサイクルセンター=ここは20213月に県から両社の事業計画を提示され、その後に県幹部と共に5町長が視察した産廃施設)に足を運んでくれたのも大きいと思います。伊賀市の市長とも面談して、いかにきちんと地域と密着した施設運営を行っているかを実感し、納得していただけましたらか」と、県と5町長が大栄環境らの御船町内への処理場計画について「納得」していたというのです。

そして、大栄環境の大田氏は「こういった形で行政が自発的に廃棄物処理事業者の施設を視察に行くことは、以前では考えられませんでした。それだけ行政や自治体にも現在の状況に危機感があるからでしょう」と自画自賛し、石坂理事長もこう応えています。

「だからこそ、この上益城5町の案件を成功させなければ。これをモデルケースとして、熊本から九州全域へ、そして日本全国にも展開させることを期待しています」と、今回の御船町上野地区で進めている施設計画事業を「モデルケース」というより、むしろ「踏み台」にしているというような、両社の営業戦略を具現化して行こうということを堂々と述べているのです。

こうした両社の「本音」が吐露されているのは、廃棄物処理業者同士の業界内のPR誌ということもありますが、あまりにも「言いたい放題」の状態であり、地域住民の側に立った気持ちといったものがまったく配慮されていない、まさに「傲慢な発言」と言えます。しかしながら、これが偽らざる事業者の「本音」とも言えるでしょう。

 

こうした大栄環境らの「傲慢な発言」を許した背景というものも、裏付けられるものがあります。それは5町による一般廃棄物処理施設を整備していくはずだった「熊本中央一般廃棄物処理施設整備促進協議会」の会議において、2022131日の会議での発言記録から明らかになっています。

この会議の席で石坂グループと県から「今回の施設で扱う産業廃棄物は、基本的には家庭から出るゴミと大差ない。危険なもの有毒物は絶対に扱わない。今後も地元住民に説明していく」と発言しています。

続いて池田委員(注・御船町議会議長)が「マミコウロード(注・益城町と甲佐町を繋ぐ広域農道)の管理費が増大するのではないか」と産廃施設の整備に伴い想定される交通量増加に対する質問に関して、藤木町長はこう答えています。「町道であり、基本的には町で整備していく」と民間の事業計画に伴う問題発生にも、町行政が対応していくという信じ難い発言をしています。

また、宮川委員(注・甲佐町議会議長)は「本協議会については予算も権限も広域連合(注・上益城広域連合)に移ったと思うが、今後、本協議会はどのようにしていくのか」と問うと、藤木町長は「今回の民間施設の立地が実現すれば、協議会の目的はおよそ達成。立地協定が締結できた時点で本協議会は解散という方向で考えている」と、まだ大栄環境らの処理場計画が正式な同意を得ていないにも拘わらず、「今回の民間施設の立地が実現すれば、協議会の目的はおよそ達成」と前のめりの発言をしているのです。

 

大栄環境らの産廃施設計画について、引き継いで協議することになった「上益城広域連合」の2022222日の定例会においては、同連合事務局の本田専門監が「お尋ねの用地(注・御船町上野原地区の建設予定地)でございますが、残り地権者2名というところの分が今回計上させていただいております。(中略)事業に必要な面積、それから平らな部分の事業施工に必要な部分というのは、もうほぼ完了しており、現在取得済みの部分でも、事業の完了は十分可能だというところでございます」と、この時点において既に大栄環境らの処理場計画が「事業の完了は十分可能だ」とという「お墨付き」を与える発言までしていました。

そして同連合のトップである連合長の荒木・嘉島町長は、次のような驚くべき発言を放っています。

「この計画について、一般ごみと産業廃棄物ということでございますが、この産業廃棄物につきましても、事業所から出るごみが産業廃棄物ということでございまして、産業廃棄物が非常にこう何か害があるというイメージがあるかもしれませんけれども、ほとんど家庭ごみと変わらないという認識でいいのではないかなと思っております。この件が極秘に進めましたのは、早く公表すると出来る物ができないということもございまして、この上益城5町の町長でいろんな対応をして、この時点で発表していいだろうというようなことで、はっぴょうさせていただいたという経緯もございます」

 

これこそまさに「住民無視」の行政行為を象徴する発言です。つまり、今回の大栄環境らの計画を「極秘」に進めることによって「出来る物もできないということ」にならないようにした、ということであります。こうした首長の発言は、果たして「民主主義」というものをどのように理解しているのか、疑いたくなるものがあります。

 

そして2022322日の「熊本中央一般廃棄物処理施設整備促進協議会」の最後の会議では、岩永委員(注・御船地区衛生施設組合会議副議長)が、こう述べています。

「知事からのメッセージ(いい施設であり県も応援)を検討していただきたい。(メディアを活用して知事のメッセージを届け、住民の安心につなげて欲しい)」と発言すると、県の吉澤課長からは「県も全国のモデルとなる施設ができると考えている。来年度、県において資源の循環について色々検討することとしている。その中でお手伝いができるようしっかり考えていく。(検討の中で、今回の事業が素晴らしいものであることをしっかり発信していく)」と、今回の計画を行政サイドが全面的にバックアップしていく姿勢が露わになっています。

そしてこれに「合いの手」を入れるようにして、協議会の会長を務める藤木町長は「先般、環境副大臣、副知事と3人で話をした時に、環境省としても全国のモデルとなる事業にするため協力するとの発言があった。いい施設になるよう、国・県ともに頑張って行く」と応じていました。

これではまるで「シャンシャン総会」そのものであります。国を含め、県と5町長が大栄環境らの産廃施設計画を全面的に支援している、としか言いようのない状況となっていたのであります。

こうした背景が、前述した大栄環境らの「傲慢な発言」にも繋がったものと推察されるのです。

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